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| 不射之射 | 2010/05/07 | | | 自分というおぞましい妖怪に、 今夜、とことん苦しんでみようかと。
愛憎悲喜交々に精神を食い荒らす私という妖怪よ。 一点の曇りもなく真っ直ぐに伸びようとする年月に、 ひたすら墨を塗り付ける妖怪よ。 ただ俺は正直にいたいのに。
我ひとり生かせば満ち足りるのに、 よこしまに尻をねじ入れ、厄介を招き入れる妖怪よ。 ただ俺は自由でいたいのに。
身から出るサビとは、まさにお前の事だ。 俺は自分という妖怪に目隠しされ、 何ともない平坦な道を、 断崖絶壁の細道と思い込まされ、 いちいち不安気に歩くようしむけられている。 俺という妖怪、この大嘘つきめ。
あの頃、俺は、 その自分という妖怪に必死に抵抗していた筈なのに、 今は間口を広げて、出入りを自由にさせている。 そしてその見返りで、 日々の糧を得て、 屋根のある住まいを得て、 人に接し、人を愛し、人に愛されようとしている。 妖怪を排除していた頃よりも、 妖怪と交渉し始めた今の方が、 遥かに暮らし向きが安定してくるのは何故だ。 本当にこれが正しいという事なのだろうか。 無邪気でいようとすればするほど、 本当の事が見えなくなるのは何故なんだ。
ステージで唱えている、 「捨て身になって死なないよう務める」 その為に、 矢張り俺は俺と今一度戦う必要があるのではないか。
今宵、俺は丸腰である。 無惨なほど無防備になって、 妖怪の訪れを待っている。 とことん口汚く、みっともないくらいの憎悪を持って、 我を締め上げ、場合によっては誅するのだ。 その覚悟を持て。
無念無想の斧となり、 弓を用いずして射抜く矢じりとなって、 今宵の闇夜に、 月の音色を奏でるのだ。
だから今夜は、 自分というおぞましい妖怪に、 とことん苦しんでみようかと。
| | | | 無惨やな 兜の下の きりぎりす | 2010/05/05 | | | 久し振りに少しだけ慕夜記ます。
ここんとこの僕の毎日は、 糸の切れた凧のように、ふんわりとしていて、 雨の行方や、晴れ間の色彩に気を取られていました。 安っぽい易者に洗脳させられていたかのように、 まるで何がどうなって今があるか、 覚えていなかったりします。 つまり、総じて平和な時間を泳いでいたという事です。
その証拠に、 ここ一ヶ月間は炭酸飲料に心奪われていました。 慢性の肩こりに悩まされ続けている僕は、 「炭酸は血行を良くして、肩こりの解消などに役立ちます」 なんて情報を聞いて、つい納得してしまうと、 朝から晩まで、ありとあらゆる炭酸飲料を飲み続けてしまいます。
或る日、カロリーゼロと謳っている炭酸飲料を飲んでいると、 退屈まぎれにその飲料に含まれている成分を調べてみたくなって、 調べていると、 アフェ…アクト…、ア…、 とにかくアなんちゃらというアミノ酸系の甘味成分が、 大変身体によくないという情報をみつけました。 化学兵器を作っていた企業が発明したとか、何とか、 僕の偏った調べによるものなので、かなり不確かな情報ですから、 あまり本気にしないで下さいね。
つまり、カロリーがないのに甘いっていう事は、 相当ヤバイ薬品を使っているんじゃないかという憶測です。
まぁ、言われてみればそうかもしれませんね、ってな情報です。
それを読んで、 「マジで、じゃあ飲まない方がいいや」 なんて危惧を思えないんです。 「今更、ねぇ」 と、開き直って飲み続けてしまうんです。 煙草や酒も近い感慨があります。
それは何でだろう?って考えてみたら、 自分の骨格に座った精神に行き当たりました。 つまり、長生きする為に生きていないんです。 色々、語弊を招く言葉だと思いますが、 僕は死にたくはないですよ。 ただ、長生きが人生の目標ではないんだと気付いたんです。
今、活き活きとしていたい、 今、腹の底から笑いたい、 今、好奇心を広げたい、 今、ゆっくり休みたい、 今、真剣に仕事がしたい、 今、誰かにぬくもりを求めたい、 今、誰かを支えてあげたい、
そんなんの”今”を繰り返して生きたい。 これが僕の目標です。 それが繋がって、続くところまで生けたらいいなと思うだけで、 何が何でも長生き、 長生きの為に、今を削って何かを我慢するなんて事が、 ただ単に性に合わないんだと思います。
そう考えたら、何か少し吹っ切れたような気がします。 僕のやる事に、いちいち理由はありませんし、 これぞという将来の展望もありません。 今というタイミングで、そうしたい事をそうしたというだけの事だらけです。 アリとキリギリスで言えば、僕は断然キリギリスなんだな。 事故を起こすのが怖いからバイクに乗らないなんて選択肢はないし、 生きる為に煙草を吸わないでもない、 生きる為に酒を呑まないでもない。
「何故、あなたは命の危険を冒してまで登山をするのですか?」 という蟻の質問に、 「そこに山があるから」 と答えた賢いキリギリスがいたという話を知っています。 今の僕には深い得心を与える言葉です。
『無惨やな 兜の下の きりぎりす』 これも放浪に身を生かした先達のキリギリスが詠んだ句です。 いずれ我が身が滅びる時、 この句を手向けてくれる人がいたなら、 僕はそれで本懐を遂げれるんじゃないかと想像しています。 | | | | | | なくしたもの | 2010/02/05 | | | 昨夜、深夜1時少し前。 適度に身体を温め、休めるつもりで布団に入ったのに、 気付けば、明くる日の夜8時だった。 20時間近く眠り込んだ。
疲れが溜まっていたのかなとも思う。
あれこれ思い、あれこれ考え出したものも、 20時間のうちにスッカリどこかれ連れ去られ、 残ったのは重っ苦しい肩こりと、 退屈に残された時間だけだった。
楽し気に思えていた朝も、 希望を見出す日中も、 確信に満ちた夜も、 全て雲散霧消して、ただ退屈だけが広がっている。
こんな時にバイクが生きていれば、 俺をどこか違う世界に連れて行き、 地味にでも景色を変えてくれただろうに、 俺の目の前には退屈が広がっている。
面白くもないテレビを見ては溜め息をつき、 買う気もない店に出掛けては暇を持て余す。
20時間が連れ去ってしまったんだ。
ギターを握り、ヘッドフォーンをつけ、 録音したものはあくびの音。 たまの休みに疲れだけを感じる。
20時間、眠らされてしまったんだ。
| | | | 唯一絶対的嘘 | 2010/02/03 | | | この世に、本当の事なんて求めてないんだよな。 全部、嘘でいいやと思ってる。 生まれたところも、育った景色も、 まったく嘘でした、 という事で気が楽になるんだ。 それくらい不思議な事が多いんだよな、 生きてるのって。 嘘だと言われた方が納得がいく。 だってこの世は、おもちゃ箱をひっくりかえした時みたいに、 愉しい。
君に、本当の事なんて求めてないんだよな。 全部、嘘でいいやと思ってる。 喜怒哀楽、愛情や憎悪も、 まったく嘘でした、 という事で僕等はイーブンだと思うんだ。 それくらい不思議な事が多いんだよな、 君の表情って。 嘘だと言われた方が興奮する。 だって君は、おもちゃ箱をひっくりかえすよりも、 豊かな表情をする。
僕に、本当の事なんて求めてないだろ? どうせ、嘘だと思ってるんだよね? 苦しみや悲しみ、孤独や傷心でさへ、 まったく嘘でした、 という事で僕は価値をえている。 それくらいいいかげんな存在でいたいんだよな、 みんなにとって。 嘘だと言われていた方が惨めじゃない。 だって僕は、おもちゃ箱の中でも、 一層古びて見飽きた奴なんだ。
これが本当の事さ。 | | | | 星の旅 | 2010/01/26 | | | 月日が経つうちに、 面白いものはやがて退屈になるんでしょうか。
年をとればとるほど、 夢や希望のような劇的な変化はなし得ないと実感するのでしょうか。
動けば動いただけ、 生活の中のイベントもあっという間に過ぎ去り、 時間ばかりが足早になるんでしょうか。
何かにつまずき、大切なものを学ぶたび、 その反面で忘れ去ってしまう数の方が多いのでしょうか。
知れば知っただけ、 感情が鈍くなるのでしょうか。
努力を重ねるのは、 出来るようになる為ですか、 出来ない事を知る為じゃないのですか。
愛する想いが強くなるほど、 生きる事が孤独だと認めなくちゃいけないのは、 何故ですか。 | | | | 何焼き? | 2010/01/22 | | | 今川焼。
一般的はそう呼ぶんでしょう。
岐阜県は各務原市出身の私には、 『大判焼き』と呼ぶのに馴染みがある。 これは見たまま。 大判・小判の大判の形状に似ているからという理由で呼ばれたに違いない。 千金を夢見る庶民的感覚で、 可もなく、不可もなく。
右隣の山梨県は甲府市出身の御仁は、 『じまん焼き』と呼んだ。 昔の甲斐では今川焼の獲得数が一種のステータスになっていたんだろう。 「お前は2つしか買えないのか!俺なんか3つだぞ!」 「いや、本当は5つ買えるんだけど、喰い切れないから2つにした」 的な。 子供達の得意気な顔が眼に浮かぶようで、 これは可。
左隣りの広島県は福山市出身の女史は、 『ゴザソウロウ』と呼んだ。
……。
ゴザッ!? ソウロウ…。
さすがはお好み焼きの國、 焼き物には厳格な気風を感じる。 ここまでこの駄菓子を奉ると、もう、 何だか理屈抜きで、 とっても可な気がする。
普段、駄菓子屋の店先や、どこぞの屋台なんかで見かけても、 ほとんど鼻にもかけない駄菓子だが、 大変高尚な食物だという事を自覚せざるを得ない、 本日、ま〜るい笑顔日和に御座候。
| | | | 羽根を失う | 2010/01/19 | | | 「ダメですよ、こりゃ」 で、目が覚めた。 カーテンから染み出る陽射しを眺めていた。 「無理ですよ、ありゃ」 携帯電話の向こうで、バイク屋のオヤジがサジを投げた。
「春のポカポカ陽気になるでしょう」 天気予報は誰も彼もがそう占った。 暖かい、とは感じないが、 確かに、いつもよりか身体が動きやすく感じる。
事故で痛めた足は、随分復調した。 鬱血して、歩き辛いという事がなくなった。 色んな人に「病院に行け」と勧められたが、 遂には自力で治してしまった気がする。
俺はいつものように、 固まった身体を長めのシャワーでもどし、 いつも通りの支度を一から丁寧に行い、 家を出る。 駐車場に一台分の空間があいている。
「ダメですよ、こりゃ」 が、どうも頭を重くしている。 バイクは廃車にしなくてはならない。 ある程度予測はしていたが、 予測通りになって尚更気分が重い。 どう考えても他に選択肢はなかったけど、 「廃車」という決断は一日だけ保留させてもらった。
手足は復調し、身体に違和感も感じなくなって来たのに、 バイクは遂に「ダメ」になった。 羽根をもがれた羽蟻の気分だ。 翼を奪われてしまった。
昔、動物占いってのが流行った時に、 俺の属性はペガサスだと教えられた。 ペガサスを動物に入れるのは強引な気がしたが、 とにかく勝手気侭な気分屋というような診断だったと思う。 今や、 そのペガサスも羽根を奪われて、馬になった。
できちまった事故だから、今更仕方ないが、 今更、一番痛い出来事だ。
だから、今日も電車に乗る。 帰りも、電車に乗る。
今日は何の日なんだろう。 平日の筈なのに、 心地良くくたばった酔っ払いが多い日だ。 | | | | 卵のウラ | 2010/01/18 | | | 世の中の表ばかりを見て育って来た。
何となく、人は人の為を想う生き物と感じ、 自分もそのような生き物になれるよう努めては来た。
しかし、世の中には裏がある。 おいらのような庶民じゃ到底見れない裏がある。 そいつらが、 時に、暴利をむさぼり、 時に、私腹を肥やし、 時に、画策して、 時に、人をおとしめて、 我が世と厚顔面で、みんなの世の中を左右している、 気になっている。
俺が信じて、努めて来たものなんて、 卵の薄皮のような上っ面でしかないんだろうか。 結局、その先に見せられている餌は、 体裁よく飾られた白身で、 物事の本質なんて、 所詮、足の引っぱり合いという黄身なのかもしれない。
なんて、味気のない卵なんだろう、この世の中は。 日々のニュースですら、 誰かの隠れ蓑に見える。 裏っ返せば、信頼していた情報なんて、 どんな色にだって変えられてしまうんだろう。 馬鹿馬鹿しい宝飾で彩られ、 その気になっているヤツこそ哀れと想う。
世の中に流れる情報は、信頼するに不充分だろう。 卵の裏はいつもドス黒いピータンだ。
矢張り、自分の接する限りの人を愛し、 視界に入る限りの風景を信じて行く事が、 この世で唯一信じれることで、 言われのない押しつけから、 身を守る方法なんだろう。
| | | | おめでとうございます!いつもより多く飛んでいます。 | 2010/01/17 | | | ずいぶん、遅ればせながら、 みなさま、明けましておめでとうございます。
おおよそ、例年の如く、年末年始は忙しく立ち働きおりましたので、 正月休みを未だに得ていません。 それだけに、旧年と新年の区切りを実感できず、 何となく正月かなぁと過ごしておりました。
ですが、新年が明けて一週間経つ頃に、 ものの見事にバイクで事故りまして、 新年早々に2mほど宙を舞いました。
詳しい事をここで述べるのはよしますが、 結構な大事故だったなと自分では思います。 何しろ2m、 そしてバイクは俺の身代わりとなって、 大破しました。
ぶつかる瞬間、 『これはタダゴトでは済まないな』と直感しました。 それと同時に、ある風景が頭をよぎり、 『死ねるか、死んでたまるか』 と一気に踏ん張り、身体の筋肉を硬化させ、 ふと気付いた時には、 交差点のド真ん中でうつ伏せに倒れていました。
静まり返った冷たいアスファルトを見詰めながら、 『足の一本も折れていてもおかしくないな』 と思ったのですが、 ゆっくり足をつくと、踏ん張りが効き二本の足で立つ事が出来ました。
手に眼をやると、寒がりの俺らしく、 過剰なほど頑丈なグローブをしており、 これもまたゆっくり動かしてみると、 多少の痛みがありましたが、確かに動きました。
立ち上がり思ったのは、 『意外と頑丈だ』 でした。
事故の処理自体は、大事に至らずに済み、 救急車が病院に俺を誘拐しようとしたのですが、 それも丁重にお願いしたら解放してもらえました。 そして、俺は交番で一通り話を終えると、一目散に仕事に向かいました。 全く、頑丈です。 無駄に頑丈です。 以前、Nack5の「鬼玉」というラジオの生番組に、 15分ほどのコーナーを持っていました。 そのタイトルが、 「便所の100w」 と提案したら、タイトルで便所ってのはよろしくないと言われ、 「あそこの100w」 どっちにしろ無駄に明るいって事です。 まさにその本領を発揮したという事でしょうか。
昨日まで、右のスネが腫上がって、 事ある毎に疼いていたのですが、 それも大分治まり、俺は元気です。
何だか、この事故のお陰で新年早々ビックリしましたが、 大きな厄を落としてスッキリした心持ちでもあります。 これで初めて年が明けたと実感しました。
今年は大きな幸福が待っているに違いないと思えます。
今年は大きな変化を成し遂げれそうな気がします。
今年は大きな基盤を手に入れる事ができそうな予感があります。
今年も、よろしく!
ただ、今まで色んな場所に俺を運んでくれたバイクが大破してしまった事だけが、 気に病みます。 | | | | | |
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